$$
\newcommand\h{{\rm [{H^+}]}}
\newcommand\a{\rm [A^{3-}]}
\newcommand\ha{\rm [HA^{2-}]}
\newcommand\hha{\rm [H_2 A^{-}]}
\newcommand\hhha{\rm [H_3 A]}
\newcommand\kaa{K_{\rm a2}}
\newcommand\ka{K_{\rm a1}}
\newcommand\kb{K_{\rm b}}
\newcommand\kaaa{K_{\rm a3}}
\newcommand\kw{K_{\rm w}}
\newcommand\ca{c_{\rm HA}}
\newcommand\cb{c_{\rm NaA}}
\newcommand\oh{\rm [OH^-]}
\newcommand\na{\rm [Na^+]}
\newcommand\cs{c_{\rm s}}
\newcommand\ph{\rm pH}
$$
ここでは多塩基弱酸の塩のうち、プロトンの一部がプロトン以外の陽イオンで置換された円の水溶液を考える。例えばリン酸二水素ナトリウム:\rm NaH_2PO_4:炭酸水素ナトリウム*\rm NaHCO_3*などである。多塩基酸の塩*\rm NaH_2A*(*\rm A*を*\rm PO_4*に置き換えれば、*\rm NaH_2A*はリン酸二水素ナトリウムとなる)の水溶液を考える。
溶液には*\rm A^{-3}*を含む化学種として、加えたリン酸二水素ナトリウムが解離して生じた*\rm H_2A^{-}*と*\rm Na^+*のほか、*\rm H_2A^-*が水素イオン*\rm H^+*を放出することによって生じる*\rm HA^-*や*\rm A^{-3}*、または*\rm H_2A^-*が水素イオンを取り込むことによって生じる:\rm H_3A:が含まれる。さらに、水の自己解離によって生じる水素イオンや水酸化物イオンも考慮する必要がある。
この水溶液は、数段ある多塩基酸の中和過程の中間段階であることにも注意する。
3塩基酸の塩
*\rm NaH_2A→Na^+ + H_2A^-\tag{a1}*
の反応によって塩は全解離する。生じた陰イオン種は、次の2種類の反応を起こす。
一つは塩の加水分解反応により*\rm H_3A*を生じる反応である。すなわち、
$$\rm H_2A^- + H_2O⇋H_3A + OH^-\tag{b}$$
である。この反応は3塩基酸*\rm H_3A*がプロトン化反応であることに注意する。また、水に溶解した*\rm H_2A*が解離する反応も考えなければいけない。すなわち、
$$\rm H_2A^-⇋H^+ + HA^{2-}\tag{a2}$$
さらに、
$$ \rm HA^{2-}⇋H^+ + A^{3-}\tag{a3}$$
と反応は進行する。これらの反応はプロトンを放出する反応である。これらにかかわる平衡定数は、
$$\kb=\f{\kw}{\ka}=\f{\hhha\oh}{\hha}$$
$$\kaa=\f{\h\ha}{\hha}$$
$$\kaaa=\f{\h\a}{\ha}$$
である。このとき*\kaa>>\kaaa*なので、式:(a3):は:(a2):と比べて無視できる
そのため、式(a1)(a2)を用いて、質量均衡と電荷平衡を考慮して解くと、
$$\h=\sqrt {\ka\kaa}\tag{★}$$
となる。
※*(★)*の導出
塩の濃度を*\cs*とし、三段目の解離を無視すると、質量均衡は、
$$\cs=\hhha+\hha+\ha=\na\tag{1}$$
であり、電荷平衡は
$$\h+\na=\hha+2\ha+\oh\tag{2}$$
となる。これらの詩kの水のイオン積のを考慮してと解くとすると、最終的には4次式になるが、途中、式*(1)*と*(2)*より、
$$\h+\hhha=\ha+\oh$$
が得られる。これに平衡定数の指揮を代入し、整理すると、次の式が得られる
$$\h^2=\f{\ka\kaa\hha+\kaa\kw}{\hha+\ka}$$
この式は、*\hha≒\cs*(すなわち*\hha>>\hhha+\ha*)、かつ*\cs>>\ka,\cs>>\f{\kw}{\kaa}*が成り立つなら、分子分母の第二項は無視でき、
$$\h=\sqrt {\ka\kaa}$$
となる。