磁気モーメントは軌道角運動量とスピン角運動量の両方により生じます。しかし、錯体の場合、一般的には、軌道角運動量の寄与はあまり考えなくてもいいです。
スピン角運動量のみを考慮した場合の磁気モーメントは
μ=√N(N+2)μB で与えられます。ここで、Nは不対電子の数、μBはボーア磁子単位です。
例えば、高スピン型正八面体配位子場にあるCr3+の有効磁気モーメントはN=3となるため、μCr3+=√3(3+2)μB=3.87μBとなります。
※Cr3+はd3の電子配置を取るので、八面体型錯体の場合、下のt2g軌道に3つ電子が入るため、不対電子は3個になります。
例題
下に示した3つの化合物について、スピンの数に基づいて有効磁気モーメントをボーア磁子単位で求めよ。
[Ru(NH3)6]Cl2、KCr(SO4)2・12H2O、CuSO4・5H2O
下に示した3つの化合物について、スピンの数に基づいて有効磁気モーメントをボーア磁子単位で求めよ。
[Ru(NH3)6]Cl2、KCr(SO4)2・12H2O、CuSO4・5H2O
解答
・[Ru(NH3)6]Cl2
Ru2+はd6低スピン型であるので、N=0よって、有効磁気モーメントは0
・KCr(SO4)2・12H2O
Cr3+はd3であるので、N=3よって、有効磁気モーメントはμ=√3×(3+2)=3.87μB
・CuSO4・5H2O
Cu2+はd9であるので、N=1よって、有効磁気モーメントはμ=√1×(1+2)=1.73μB
参考)
無機化学演習 東京化学同人 p133
「無機・分析化学演習」竹田満洲雄 p339