C=C結合(14族=14族)とB=N結合(13族=15族)はルイス構造で書くと等電子結合だということがわかります。そのため、B=N結合を含んだホウ素窒素化合物炭素と類似の構造が取りやすいです。
その代表的なホウ素窒素化合物がボラジン、またの名を「無機ベンゼン」と呼ばれる化合物です。ボラジンは以下からわかるように、ベンゼンと等電的かつ等構造的な化合物です。
しかし、化学的性質は全く異なります。
それは無機ベンゼンであるボラジンはベンゼンと異なり、芳香族性が無いからです。炭素では電子が非局在化していますが、無機ベンゼンの場合は、電気陰性度が高いNに電子が局在化しています。
無機ベンゼンが芳香族性が無い証拠として、ベンゼンでは置換反応が起こりますが、無機ベンゼンでは付加反応が起こりやすいです。
無機ベンゼンの生成反応
無機ベンゼンは
$$\rm 3LiBH_4+3NH_4Cl\xrightarrow[エーテル、Δ ]{} \overset{ボラジン(無機ベンゼン) }{B_3N_3H_6}+3LiCl+9H_2$$
などの反応により作ることができます。
無機ベンゼンの置換反応
ベンゼンは置換反応が起こりやすいですが、無機ベンゼンは付加反応が起こりやすいです。一重結合で無機ベンゼンを書いた場合、当然$\rm N$の方に非共有電子対が存在します。そこに、$\rm H^+$がアタックして、そして、空軌道を持つ$\rm B$の方に$\rm Cl^-$がアタックするのです。そのため、以下のような構造になります。これはイス型を取ると言われています。そして、そのB置換体を加熱すると、ボラジンのCl置換体ができます。つまり、ベンゼンと違い、Clを置換させるためには一度付加反応を経由する必要があるということです。