線形エルミート演算子の4つの定理

以下の定理は、エルミート演算子はすべて線形エルミート演算子であるとします。
定理1
P,QP,Qがエルミート演算子であるとする。P,QP,Qが交換可能(可換)なら、(PQ=QPPQ=QP)なら、PQPQはエルミート演算子である。

PQPQはエルミート演算子である」ということは下の式が成り立つということです。
ΨiˆPˆQΨidτ=Ψi(ˆPˆQ)Ψidτ
以下ではこれを証明します。

ΨiˆP(ˆQΨi)dτ=(ˆQΨi)ˆPΨidτ(ˆP)=(ˆQΨi)(ˆPΨi)dτ=(ˆPΨi)(ˆQΨi)dτ=(ˆPΨi)ˆQΨidτ=ΨiˆQ(ˆPΨi)dτ(ˆQ)=ΨiˆQˆPΨidτ=Ψi(ˆQˆP)Ψidτ=Ψi(ˆPˆQ)Ψidτ(ˆPˆQ)これで証明ができました。


PQが交換可能(可換であるともいう)ということは、演算の順番を交換しても結果が変わらないということです。
つまり、ˆPˆQf(x)ˆQˆPf(x)
一般的に、交換可能ではない場合、ˆPˆQf(x)ˆQˆPf(x)です。
交換可能ではない場合の具体的は、ˆP=ddx,ˆQ=xであるときです。計算してみると、以上に挙げた式が成り立たないことがわかります。

定理2
エルミート演算子の異なる固有値に対応する固有関数は直交する。
ˆFΨi=fiΨi,ˆFΨj=fjΨj,fifjなら、<\Psi_i|\Psi_j>=0
例としては、ˆFがハミルトニアン、ΨiΨjが異なる軌道の波動関数、fiがその軌道のエネルギーとかです。

この例だと、
Ψ1sΨ2s=0 であるということです。

これを証明します。
ˆFΨi=fiΨiˆFΨj=fiΨj(1)ΨjΨjˆFΨidτ=ΨjfiΨidτΨjˆFΨidτ=fiΨjΨidτ(fi)(2)ˆFΨj=fjΨjˆFΨj=fjΨj(fj)(2)ΨiΨiˆFΨjdτ=ΨifjΨjdτΨiˆFΨjdτ=fjΨiΨjdτ(fi)ˆF(3)(4)fiΨjΨidτ=fjΨiΨjdτfifjΨiΨjdτ=0よって、証明された。

定理3
P,Qが交換可能のときには、同時に両方の演算子の固有関数となる一組の関数が存在する。つまり、これらの演算子に対応する物理量を同時にかつ正確に記述できる。
ˆFΨ=fiΨi,ˆGΨi

定理4
交換可能なエルミート演算子F,Gがあり、一組の関数がˆFΨi=fiΨiであるなら、<Ψi|ˆG|Ψj>ij=0である。

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