以下の定理は、エルミート演算子はすべて線形エルミート演算子であるとします。
定理1
P,QP,Qがエルミート演算子であるとする。P,QP,Qが交換可能(可換)なら、(PQ=QPPQ=QP)なら、PQPQはエルミート演算子である。
「PQPQはエルミート演算子である」ということは下の式が成り立つということです。
∫Ψ∗iˆPˆQΨidτ=∫Ψi(ˆPˆQ)∗Ψ∗idτ
以下ではこれを証明します。
∫Ψ∗iˆP(ˆQΨi)dτ=∫(ˆQΨi)ˆP∗Ψ∗idτ(∵ˆPはエルミートであるから)=∫(ˆQΨi)(ˆPΨi)∗dτ=∫(ˆPΨi)∗(ˆQΨi)dτ=∫(ˆPΨi)∗ˆQΨidτ=∫Ψ∗iˆQ∗(ˆPΨi)dτ(∵ˆQはエルミートであるから)=∫Ψ∗iˆQ∗ˆP∗Ψidτ=∫Ψ∗i(ˆQˆP)∗Ψidτ=∫Ψ∗i(ˆPˆQ)∗Ψidτ(∵ˆPとˆQか交換可能であるから)これで証明ができました。
※
PとQが交換可能(可換であるともいう)ということは、演算の順番を交換しても結果が変わらないということです。
つまり、ˆPˆQf(x)=ˆQˆPf(x)
一般的に、交換可能ではない場合、ˆPˆQf(x)≠ˆQˆPf(x)です。
交換可能ではない場合の具体的は、ˆP=ddx,ˆQ=xであるときです。計算してみると、以上に挙げた式が成り立たないことがわかります。
定理2
エルミート演算子の異なる固有値に対応する固有関数は直交する。
ˆFΨi=fiΨi,ˆFΨj=fjΨj,fi≠fjなら、<\Psi_i|\Psi_j>=0
例としては、ˆFがハミルトニアン、Ψi、Ψjが異なる軌道の波動関数、fiがその軌道のエネルギーとかです。
この例だと、
∫Ψ∗1sΨ2s=0 であるということです。
これを証明します。
ˆFΨi=fiΨiˆFΨj=fiΨj(1)式に左からΨ∗jを掛けて全空間で積分します。∫Ψ∗jˆFΨidτ=∫Ψ∗jfiΨidτ∫Ψ∗jˆFΨidτ=fi∫Ψ∗jΨidτ(∵fiは定数)(2)式にの両辺に∗を掛けますˆF∗Ψ∗j=f∗jΨ∗jˆF∗Ψ∗j=fjΨ∗j(∵fjは実数)(2∗)式に左からΨiを掛けて全空間で積分します。∫ΨiˆF∗Ψ∗jdτ=∫ΨifjΨ∗jdτ∫ΨiˆF∗Ψ∗jdτ=fj∫ΨiΨ∗jdτ(∵fiは定数)ˆFはエルミート演算子なので、(3)式と(4)式の両辺は等しいです。なので、fi∫Ψ∗jΨidτ=fj∫ΨiΨ∗jdτよって、fi≠fjなので、この式が成り立つならば、∫ΨiΨ∗jdτ=0よって、証明された。
定理3
P,Qが交換可能のときには、同時に両方の演算子の固有関数となる一組の関数が存在する。つまり、これらの演算子に対応する物理量を同時にかつ正確に記述できる。
ˆFΨ=fiΨi,ˆGΨi
定理4
交換可能なエルミート演算子F,Gがあり、一組の関数がˆFΨi=fiΨiであるなら、<Ψi|ˆG|Ψj>i≠j=0である。