過冷却とエンタルピー変化・エントロピー変化

このページでは過冷却に関するエンタルピー変化やエントロピー変化を求める

例題
$\rm 101.325kPa(1 atm)$、$260\rm K$で$\rm 1 mol$の過冷却の水が氷になる変化に伴うエンタルピー変化およびエントロピー変化を求めよ。また、この$\rm 260K$で起こる変化は可逆か不可逆かのいずれかであるかを書き、その判定の理由を述べよ。ただし、氷の融解熱は$227 \rm K$で$335 \rm Jg^{-1}$、水及び氷の定圧比熱はそれぞれ$4.18\rm JK^{-1}g^{-1}$および$2.01\rm JK^{-1}g^{-1}$とする。

解答
エンタルピーもエントロピーもともに状態量であるから、その変化量は始めの状態と終わりの状態だけで決まり、変化の道筋にはよらない。そこで、この変化を次の①~③の一連の可逆過程に置き換えて計算する。
すなわち、
$$\b
ΔH&=&ΔH_1+ΔH_2+ΔH_3 \\
ΔS&=&ΔS_1+ΔS_2+ΔS_3 \\
\e$$

過程①は定圧可逆過程であるから、
$$\b
ΔH_1&=&\int^{273K}_{260K}C_p \d t \\
&=& \rm 4.18[JK^{-1}g^{-1}]×18.0[g mol^{-1}]×(273-260)\\
&=& \rm 978[J mol^{-1}]\\
ΔS_1&=&\int^{273K}_{260K}\f{C_p}{T}\d T \\
&=& \rm 4.18[JK^{-1}g^{-1}]×18.0[g mol^{-1}]×\int^{273K}_{260K}\f{\d T}{T} \\
&=& \rm 4.18[JK^{-1}g^{-1}]×18.0[g mol^{-1}]×(\ln \s{\f{273}{260}})\\
&=&\rm 3.67[Jmol^{-1}K^{-1}]
\e$$ となる。

過程②は凝固点における凝固であるから可逆変化である。また、エンタルピー変化は融解熱の符号を変えたものに等しい。
$$\b
ΔH_2&=&\rm -335[Jg^{-1}]×18.0[g mol^{-1}]=-6.03[kJ mol^{-1}] \\
ΔS_2&=&\f{Q_{系}}{T} \\
&=& \f{ΔH_2}{T}\\
&=& \f{-6.03×10^3}{273}\\
&=& \rm -22.1[J mol^{-1}K^{-1}]\\
\e $$となる。

過程③は定圧可逆過程であるから、
$$\b
ΔH_3&=&\int^{260}_{273}C_p \d T \\
&=& 2.01×18.0×(260-273)\\
&=& \rm -470[J mol^{-1}]\\
ΔS_3&=&\int^{260}_{273}\f{C_p}{T} \d T \\
&=&2.01×18.0×\ln(260-273) \\
&=& \rm -1.77[J mol^{-1}K^{-1}]\\
\e $$
よって、
$$\b
ΔH&=&\rm (0.978-6.03-0.470)[kJmol^{^-1}]=-5.52kJmol^{-1} \\
ΔS&=&\rm (3.67-22.1-1.77)[Jmol^{-1}K^{-1}]=-20.2[{\rm Jmol^{-1}K^{-1}}] \\
\e $$
可逆・不可逆を論ずるためには系だけではなく、外界も含めたいエントロピー変化を知らなくてはならない。この場合、外界が得た熱量は$ΔH=5.52[{\rm kJ}]$であるが、外界の熱容量は無限に大きいと捉えてもよいから、温度は変化しない。したがって、外界のエントロピー変化は
$$ΔS’=\f{5.52[{\rm kJ}]}{260[\rm K]}=21.2[{Jmol^{-1}K^{-1}}] $$となる。したがって、外界を含めたエントロピー変化は$ΔS+ΔS’=1.0>0$となるから、この変化は不可逆変化である。

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