カルボン酸誘導体のカルボン酸への変換はカルボン酸誘導体を加水分解することによって起こります。
例に漏れず、反応の起こりやすさはカルボン酸誘導体の反応性に従います。つまり反応が起こりやすい順に、カルボン酸塩化物>カルボン酸無水物>エステル>チオエステル>エステル>アミドの順番です。
塩基性条件下で加水分解はすべて求核アシル置換反応であるので求核アシル置換反応が理解できていれば暗記をしなくても頭のなかで反応を組み立てることができます。
カルボン酸塩化物の加水分解
カルボン酸塩化物は水と反応してカルボン酸になります。
また、この反応途中でHClが生成するので、副反応を防ぐためにピリジンやNaOHのような塩基の存在下で行う必要があります。
この反応と同様な反応に酸塩化物のエステルの変換がありますのでそちらもどうぞ。
参考:マクマリー有機化学 中 第8版 p794
カルボン酸無水物の加水分解
通常この反応はあまり用いられません。酸無水物を出発物質とする反応は、アルコーリシスとアミノリシスのみがよく用いられます。
エステルの加水分解
エステルは水の加水分解によってカルボン酸とアルコールに分解されます。
この反応は酸性、塩基性いずれの条件下でも起こります。
塩基性条件でのエステルの加水分解の反応機構は以下のようになります。
また、塩基性条件下でのエステルの加水分解は”saponification(けん化)”と言われています。実際、動物性脂肪を塩基水溶液中で煮沸することによって石鹸は生産されています。
酸性条件でのエステルの加水分解の反応機構は以下のようになります。
また、反応を見てもらうとわかるようにすべての段階が可逆反応です。
加水分解は左から右の反応ですが、右から左に反応が進む場合はFischerエステル合成ですね。
参考:マクマリー有機化学 中 第8版 p801~p803