クロマトグラフィーの分類

クロマトグラフィーはいずれも連続した平衡状態により、分析成分がどの程度固定相にとどまるのか、あるいは移動相にとともに移動するのかというデータから物質を分離する技術です。

この「~クロマトグラフィー」は分離原理や分析対象、分析目的などで用語が使い分けされます。
そのため、複数の分類法があります。以下はその例をあげます。

分類例①
移動相による分類

移動相の種類によってクロマトグラフィーを分類するならば、ガスクロマトグラフィーと液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィーに分けられます。

・ガスクロマトグラフィー(GC)

気ー固クロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィーの一種)及び気ー液クロマトグラフィー(分配クロマトグラフィーの一種)はまとめてガスクロマトグラフィーと呼ばれます。このガスクロマトグラフィーはGC(gas chromatography)と言われます。

これは後述の液体クロマトグラフィーに対応する用語とも言えます。

ガスクロマトグラフィーは1950年代、液体クロマトグラフィーより10年ほど遅れて開発されました。しかしながら、ガスクロマトグラフィーは液体クロマトグラフィーよりも先に装置化が進み、迅速に分析ができたので、急速に普及していきました。特に石油化学産業にすぐ取り入れられ、ガスクロマトグラフィーは当時の主力分析機器の地位を獲得しました。

・液体クロマトグラフィー(LC)

ガスクロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーはほとんどすべてこの液体クロマトグラフィーといえます。液体クロマトグラフィーはLC(liquid chromatography)と呼ばれます。

HPLC( 高速液体クロマトグラフィー: high-performance liquid chromatography)は機器化された液体クロマトグラフィーのことを指します。(ガスクロマトグラフィーは最初から機器化されていた。)

当初LCの性能はGCに大きく遅れをとっていましたが、1970年代にGCによる技術蓄積により開発されたHPLCを製薬産業が取り入れることにより、急速に普及し、現在ではガスクロマトグラフィーよりも広く用いられるようになっています。

・超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)

これは移動相に液体と気体の中間的な性質を示す超臨界流体を用いたものです。
超臨界流体クロマトグラフィーはSFC(super-critical fluid chromatography)と呼ばれます。
一般的に分離能力がGCやHPLCより高く、GCやHPLCでは分離が困難な物質(例えばキラル化合物の分離など)に利用されています。


分類例② 
分離機構による分類(固定相の種類による分類)

クロマトグラフフィーはその分離を達成する際の平衡過程の種類によって大きく、
(1)吸着、(2)分配、(3)イオン交換、(4)サイズ排除 の4つに分類することができます。

これは主に固定相の種類による分類といえます。

ガスクロマトグラフィーでは(1)の吸着平衡か(2)の分配平衡により分離が達成されますが、
液体クロマトグラフィーでは(1)~(4)が複合的に作用しています。

(1)吸着クロマトグラフィー

吸着クロマトグラフィーの固定相は固体です。そしてその固体の上に試料成分が吸着します。
移動相は液体が気体です。
薄層クロマトグラフィー(TLC)がこの吸着クロマトグラフィーの例です。

(2)分配クロマトグラフィー

分配クロマトグラフィーの固定相は、通常、固体上(固体担体)に支持された(結合した)液体です。
移動相は液体か気体です。
分配クロマトグラフィーは歴史的順番により順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーに分けることができます。

順相クロマトグラフィー
は極性固定相(シリカゲルに結合したシアノ基など)が、非極性の移動相とともに用いられます。これは水に溶けない化合物を分離するのに用いられます。

逆相クロマトグラフィー
は非極性の固定層が極性の移動相とともに用いられます。こちらは水溶性の化合物を疎水性の違いによって分離するのに用いられます。

今現在より広く用いられているのは逆相クロマトグラフィーですが、最初に開発されたのは順相クロマトグラフィーの方です。なので、最初に開発された方を順相、後から開発された方を逆相クロマトグラフィーというようになりました。

(3)イオン交換クロマトグラフィー

イオン交換クロマトグラフィーはイオン交換能を持つ担体を固定相として用います。
イオン交換平衡に基づいて分離をします。しかしながら同時に、疎水性相互作用もイオン交換分離過程で大きな役割を果たしています。

(4)サイズ排除クロマトグラフィー

サイズ排除クロマトグラフィーでは、溶媒和した分子が固定相中の多孔性の空孔や通路に浸透する能力に従って分離されます。


分類例③
固定相支持体の形状による分類

固定相支持体の形状によって分類するならば、大きくカラムクロマトグラフィーと平面クロマトグラフィーの2つに分類できます。

ガスクロマトグラフィーはすべてカラムクロマトグラフィーですので、これは液体クロマトグラフィーの中の分類とも言えます。

・カラムクロマトグラフィー

充填剤を詰めた円筒状の管や管壁に固定相を担持させたキャピラリー管のことをカラムといいますが、このカラム内で分離を行うクロマトグラフィーをカラムクロマトグラフィーです。

・平面クロマトグラフィー

分離場の形状がシート状であるクロマトグラフィーを平面クロマトグラフィーと呼ばれます。これは薄層クロマトグラフィーとペーパークロマトグラフィーの2つに分類することができます。

薄層クロマトグラフィーはガラスなどの平面上に微粒子を薄く塗布した薄層状のプレート(薄層板)を用いて分離を行うクロマトグラフィーです。

薄層板の代わりにろ紙を用いるクロマトグラフィーをペーパークロマトグラフィーといいます。


※より細かい分類のクロマトグラフィー
 (HPLCの分類)

以下のクロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の一種で、HPLCの分離モードの一つとして捉えられています。

・親水性相互作用クロマトグラフィー

これは順相クロマトグラフィーの一種です。本来の順相クロマトグラフィーでは非水系の有機溶媒を移動相として用いるため、この溶媒系に溶解しない親水性化合物の多くが順相クロマトグラフィーで分析できないという問題がありますが、この親水性相互作用クロマトグラフィーでは極性の高い官能基を修飾した固定相と水系溶媒(親水性有機溶媒と水との混合溶液)の移動相を用いることによる、逆相クロマトグラフィーでは保持されにくい親水性の高い化合物の保持を可能としています。これは生体中の高極性化合物の分離に有効であることが知られています。

・疎水性相互作用クロマトグラフィー

これは高濃度の塩を含む水系の移動相が用いられ、主にタンパク質の分離に利用されます。主にタンパク質の分離に利用されます。吸着は高い塩濃度で起こり、塩濃度を徐々に減少させることで溶出させます。

・イオンクロマトグラフィー

これはイオン交換クロマトグラフィーの一種です。イオン交換クロマトグラフの後段に溶離液由来の電気伝導率を引き下げるバックグラウンド減少装置(サプレッサー)を配備した分析システムを用いたクロマトグラフィーのことです。これは無機陰イオンやアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンの高感度分析に不可欠です。環境分析などに一般的に用いられます。

・アフィニティークロマトグラフィー

抗原と抗体のような特定の分子間で働く生物学的親和性・分子認識能を利用して分離します。

・イオン対クロマトグラフィー

分析対象とするイオン性成分に対して、それと反対符号の電荷をもつ界面活性剤を移動相に添加すると試料イオンと界面活性剤との間にイオン対が形成され、イオン性成分を逆相カラムにより疎水性相互作用に基づいて分離することができます。

※その他のクロマトグラフィー

以下のミセル導電クロマトグラフィーはクロマトグラフィーと名前がつきますが、電気泳動も同時に用いられています。クロマトグラフィーと電気泳動のハイブリットのようなクロマトグラフィーです。

・ミセル導電クロマトグラフィー

中性条件の分離対象も分離でき、分離能力も高いクロマトグラフィーです。クロマトグラフィーと電気泳動の両方の原理を用いています。詳しくはミセル導電クロマトグラフィーをご覧ください。

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