沈殿の生成

良い沈殿を作るための操作

重量分析において、沈殿を生成させる場合には、良い沈殿を生成させるために、以下のような操作を行う場合があります。

1)できるだけ希薄な沈殿剤を使用する。
これは希薄な溶液から沈殿が生成する時ほど過飽和になりにくく、結晶核の生成が少なくなり、結晶がゆっくり成長するので、大きな結晶が得られます。また、液量が多いほど不純物が析出しやすくなるという効果もあります。

2)溶液をかき混ぜる。
局所的に過飽和になって結晶が急激に成長するのを防ぐためです。かき混ぜることによって、均一の速度で結晶が成長するという効果があります。

3)比較的高温で沈殿を生成させる。
高温の方が過飽和になにりくく、また溶解度は一般的に温度が高い方が大きいので不純物が析出しにくくなるという効果が期待できます。

4)沈殿の熟成
沈殿の熟成とは溶液から沈殿を生成させたのち、ある程度の時間、沈殿を母液と接触させて沈殿の粒子を成長させることです。こうすることで小さな結晶が溶解し、大きな結晶が成長していくので、表面積が小さくなり、不純物の吸着が少なくなります。また、ろ別が容易になるという効果もあります。

5)洗浄液に電解質を加えること。
コロイド状の沈殿の場合、水で洗浄するとコロイド粒子間の静電的な反発で会合が解けるので、これを防ぐ目的のために電解質溶液で洗浄します。また、難溶性の沈殿の場合、沈殿の溶解を防ぐ目的で共通なイオン(主にアンモニウム塩)を含む溶液で洗浄スます。アンモニウム塩は沈殿に吸着されていても、沈殿を加熱、焼生する間に分散して揮散します。

参考)
無機・分析化学演習 p219

沈殿の不純物について

難溶性強電解質${\rm M}_a{\rm X}_b$の溶解度積を$K_{\rm sp}$とし、その溶解度を$S$とすれば、この両者は$K_{\rm sp}={\rm [M]}^a[{\rm X}]^b=(aS)^a(bS)^b=(a^a+b^b)S^{a+b}$という関係があります。(あまりこのトピックには関係ないですが、一応関係式を載せてみました。つぎから不純物についての記述です)

不飽和状態にある別の陽イオン$\rm M’$によって目的物質${\rm M}_a{\rm X}_b$が汚染されることを共沈といいます。この共沈は厳密には、${\rm M’}_a{\rm X}_b$のイオン積が${\rm M’}_a{\rm X}_b$の溶解度積より大きいために起こる同時沈殿とは区別します。

共沈は3つの一般的機構から成り立っています。それは、1)吸着 , 2)固溶体生成 , 3)吸蔵です。

また、${\rm M}_a{\rm X}_b$が沈殿した後に、母液との接触が長い場合、さまざまな不順物質が沈積します。この現象は後期沈殿といわれ、これも共沈とは区別される現象です。

共沈の具体例は、$\rm BaSO_4$の沈殿に$\rm PbSO_4$がまじって沈殿したり、$\rm BaSO_4$の表面に$\rm NO_3^-$が吸着されて沈殿するといったものです。

後期沈殿の具体例は、$\rm Zn^{2+}$は酸性溶液からは$\rm H_2S$で沈殿しないが、$\rm CuSやHgS$の沈殿とともに母液中に放置していると、それらの表面に$\rm ZnS$がゆっくりと沈殿していくとったものです。

参考)
無機・分析化学演習 p350

スポンサーリンク