アルコールの酸化

アルコールを酸化し、カルボニル化合物にする反応は、アルコールの反応で最も重要な反応の1つです。

第一級アルコールを酸化すると、アルデヒドを経由してカルボン酸になります。中間体であるアルデヒドは非常に速く酸化されるので、($\rm CrO_3 , Na_2Cr_2O_7$)のような酸化剤を用いた場合、普通は単離することはできません。そのため、アルデヒドを得たい場合は穏やかな試薬であるDess-Martinペルヨージナンをジクロロエタン中で反応させます。

第二級アルコールを酸化するとケトンになります。

第三級アルコールは酸化されません。

このような、第一級アルコールや第二級アルコールの酸化は$\rm KMnO_4 , CrO_3 , Na_2Cr_2O_7$や先ほどのDess-Martinペルヨージナンなど、多くの試薬で行うことができます。どの酸化剤を用いるかは、用途や酸化させるアルコールの壊れやすさを考える必要があります。例えば、単純で安価なアルコールの大規模酸化は安い酸化剤で行うのが適切であり、高価で繊細な多官能性アルコールの少量酸化には値段にかかわらず、温和で収率の高い試薬で行うのが適切です。

次にこのアルコールの酸化の反応機構ですが、これはE2反応です。E2反応と聞くと、真っ先に炭素ー炭素間二重結合の形成を思い浮かべてしまうかもしれませんが、炭素ー酸素間二重結合の形成もこのE2反応でおこります。アルコール酸化の反応機構の具体例全てから、酸素に結合している炭素から水素が引き抜かれ、同時に酸素と結合している脱離基が脱離する、というE2反応のパターンが見て取れます。

アルコール酸化の反応機構の例

例1)酸水溶液中の三酸化クロム
通常の酸化剤を用いる場合は、アルデヒド中間体を経てカルボン酸が得られます。この反応の中にはE2反応が見て取れます。

例2)Dess-Martinペルヨージナン
Dess-Martinペルヨージナンという穏やかな試薬を用いると、酸化をアルデヒドでとめることができます。この反応機構の中にもE2反応が見て取れます。

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