アルドール反応

アルドール反応

アルドール反応はα水素をもつアルデヒドまたはケトン同士で起こるカルボニル縮合反応のことです。

α水素を持つアルデヒドまたはケトンの一部が塩基によってエノラートイオンになり、そのエノラートイオンと未反応のアルデヒドまたはケトンが求核付加とα置換を同時に起こすことでβ-ヒドロキシアルデヒドまたは β -ヒドロキシケトンができます。この β -ヒドロキシカルボニル化合物をアルドール類といいます。また、βーヒドロキシカルボニル化合物の「β」はカルボニル基の2つ隣の炭素にヒドロキシ基がつくということを表しています。

この反応はすべての段階が可逆反応です。傾向としてはアルデヒドの場合は平衡はアルドール側に傾きますが、ケトンの場合はあまりアルドール側に傾きません。

アルドール縮合反応では触媒量の弱い塩基(ナトリウムエトキシドなど)を用います。
この弱い塩基により反応物中のアルデヒドやケトンをエノラートイオンにさせ、そのエノラートイオンとアルデヒドやケトンと反応させることで縮合生成物であるアルドールを生成させます。

アルドール反応とよく似た条件の反応としてはαアルキル化があります。αアルキル化も塩基としてナトリウムエトキシドを用います。一見、αアルキル化を行う際に、このアルドール反応が副反応としておこってしまうようにみえます。しかし、αアルキル化では1当量の塩基(ナトリウムエトキシド)を使用するため、アルデヒドやケトンが速やかに、かつ完全にエノラートイオンに変化し、エノラートイオンではないアルデヒドやケトンがなくなるため、アルドール反応は進行しません。

これはαアルキル化以外のα置換反応にも言えることで、逆にα置換では強塩基を1当量用いて出発物質であるアルデヒドやケトンを速やかにかつ完全にエノラートイオンに変化させないと副反応としてアルドール反応が起こるといえます。

アルドール縮合反応

アルドール反応によって生成したβーヒドロキシアルデヒドとβーヒドロキシケトンは容易に脱水されてα,β-不飽和生成物(共役エノン)になります。

エノンとはアルケンとケトンで共役系を構成する不飽和化合物または官能基のことで、一般式は以下のようになります。

β-ヒドロキシカルボニルは酸性、塩基性条件ともに容易に脱水されます。

塩基性条件においては酸性のα水素が引き抜かれ、生成するエノラートイオンからヒドロキシ基が脱離基として脱離します(この反応機構はE1cB反応機構といいます)。通常ヒドロキシ基は脱離基として劣っており、脱離することはめったにありませんが、この反応だけ唯一と言っていいほど例外的にヒドロキシ基が脱離します。

酸性条件においてはエノールが生成し、ヒドロキシ基がプロトン化され、次にE1、またはE2反応により水が除去されます。

このアルドール縮合反応(アルドール脱水反応)は、アルドールそのものの生成に必要な(つまりアルドール反応)よりもわずかに激しい条件(たとえば少し高い温度)にするだけで起こります。

このアルドール縮合反応を起こすのは、平衡がアルドール側に偏りにくいケトンのアルドール反応を促進するためです。この反応では水が取れるため、この水を生成物から除去することでケトンなどの最初のアルドール反応の平衡が不利であってもこのアルドール縮合反応の脱水の段階で高い収率で進行させることができるます。

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