ハロゲンのような求核性脱離基を有する芳香族化合物は求核置換反応を受けます。この反応は反応条件によって付加脱離か、脱離付加かの段階的な反応として進行します。
付加脱離反応は以下のように、ニトロ基などの電子求引基によって求核攻撃を促進し、中間体アニオンが安定化するときに起こります。
対する、脱離付加反応はベンザイン中間体を経由する反応です。
活性化されていないハロベンゼンを、強塩基性条件あるいは塩基性で高温条件という強力な反応条件で反応させると、脱離反応によりベンザイン中間体を生じ、更に求核付加をおこして置換反応になります。この順番から、脱離付加反応と呼ばれます。
また、ベンザイン中間体には、2つの三重結合炭素どちらにもおなじように付加できますから、生成物は単純にハロゲンを置換したものだけではなく、隣接炭素に置換した生成物も生じます。このことはベンゼン環の炭素を同位体で標識して確かめることもできますし、そもそも、以下のように、$p-$メチル置換体の反応で、2つの位置異性体がほぼ等量生成してくることからもわかります。
アニリンを氷冷下、亜硝酸($\rm NaNO_2+H_2SO_4$)で処理することで生じる
ジアゾニウム塩は優れた脱離基の$\rm N_2$のために、加熱するだけでフェニルカチオンを生じ、$\rm S_{N}1$的な置換反応を起こします。これも脱離付加反応の一種と言えます。
以下のように、このジアゾニウム塩からは様々な芳香族化合物に変換することができます。
参考)
電子の動きで見る有機反応のしくみ p67~p69