芳香族求電子置換反応

芳香族求電子置換反応

芳香族π電子系に求電子付加が起こると、電子が一つ足りなくなり、中間体カチオンは芳香族性を失い、不安定化します。そのため、プロトンを失うことによって、芳香族性の安定性を取り戻し、再び安定化します。
上で書いた、中間体カチオンはベンゼニウムイオンと呼ばれます。
このベンゼニウムイオンは次のように書くこともできます。

以降の反応ではベンゼニウムイオンはこのように書くこととします。

ところで、求電子種$\rm E$は実際にはカチオンであるとは限りません。
例えば、ルイス酸触媒による臭素化は以下のような反応です。
その他の体表的な求電子種には、$\rm NO_2^+$(ニトロ化を起こす)、$\rm SO_3$(スルホン化を起こす)、$\rm R^+$(アルキル化を起こす)、$\rm R-C^+=O$(アシル化を起こす)などがあります。これらの求電子種はそれぞれ以下の反応で得られます。
$$\rm HNO_3+2H_2SO_4⇆NO_2^++H_3O^++2HSO_4^-\\
H_2S_2O_7⇆H_2SO_4+SO_3\\
R-Cl+AlCl_3⇆R^++Al^-Cl_4\\
R-CO-Cl+AlCl_3⇆R-C^+=O+Al^-Cl_4 $$
また、通常の反応では求電子性脱離基としてプロトンが外れますが、アルキル基やケイ素置換基、ニトロ基などの反応もあります。(このような反応をイプソ(ipso)置換といいます。)

話を戻すと、付加中間体の正電荷は
を見ればわかるように、オルト位とパラ位に特に多く分布しています。そのため置換ベンゼンの反応は、より安定な中間体が生成するような配向性で進行します。すなわち、電子供与基はオルト、パラの正電荷を安定化できるので、反応を促進すると同時に、オルト・パラの配向のせいせ物を与えます。一方、電子求引基は正電荷を不安定化するのでその影響の少ないメタ位で反応します。(また、反応速度が減少します)。ハロゲンは誘起効果による電子求引性のため、不活性化基ではありますが、ハロゲンは誘起効果による電子求引性のため不活性化基ではありますが、非共有電子対を供与できるので、オルト、パラ配向性を示します。

以下に芳香族求電子置換反応における配向性は以下の通りです。

$$\rm O^-\rm >NH_2>OH>OMe>Me,R>\rm Ph  >\rm F>Cl,Br,I >COMe,CF_3>CN>NO_2>N^+R_3 $$$$\rm O^->・・活性化基・・>Ph>|F>・・不活性化基・・>N^+R_3$$$$\rm O^->・・オルト・パラ活性化基・・>Cl,Br,I>|COMe,CF_3>・・メタ配向性・・>N^+R_3 $$
参考)奥山 格 「電子の動きで見る有機反応の仕組み」東京化学同人 p55

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