Crutius転位はカルベンの窒素類似体であるニトレン中間体を経由して進行します。
Wolf転位の窒素原子のバージョンです。
ニトレンは酸塩化物とアジ化ナトリウム$\rm NaN_3$との求核置換反応してアシルアジドを得た後、それから窒素$\rm N_2$が脱離することで得られます。
ニトレンの生成
ニトレンが生成すると直ちに(同時に)転位が起こります。このニトリルへの転位をCrutius転位といいます。Crutius転位の生成物はイソシアナートですが、この後に水で加水分解すると、カルバミン酸を経由して脱炭酸し、アミンになります。アルコールと反応させるとカルバミン酸エステルが得られます。
これからわかるように、Crutius転位は酸塩化物を炭素が一つ少ないアミンに変換する方法として有用であることがわかります。
※後日、全体の反応機構をきれいに書き直してみました。
(イソシアナートと水が反応するverのみ)
参考)
ウォーレン有機化学 下 第二版 p1091