トリシリルアミン$\rm (H_3Si)_3N$はトリメチルアミン$\rm (H_3C)_3N$のケイ素類似体である。ただし、以下のような違いがある。
\begin{array}{cc}
\hline
&\rm (H_3C)_3N&\rm (H_3Si)_3N \\ \hline
形状 &三角錐型 &平面構造\\
ルイス塩基性 & ある &極めて低い\\\hline
\end{array}
$\rm (H_3Si)_3N$が平面型構造を取るのは、$\rm Si$の電気陰性度が$\rm C$より小さいので$\rm Si-N$結合は$\rm C-N$結合よりも極性が大きいからである。この差のため、トリシリルアミン中のシリル基間には反発的な長距離力(静電力)が働き、平面構造をとる原因となっている。(平面構造を取る原因ではなく、あくまで静電的な反発であり、d軌道の寄与は関係がない。d軌道の寄与はルイス塩基性に影響するのみである。)
$\rm (H_3Si)_3N$のルイス塩基性が極めて低いのは、結合にd軌道が寄与し、窒素の周りには$\rm sp^2$混成軌道ができて、孤立電子対が$π$結合を通じて非局在化するからである。(非局在化は平面構造を取る原因ではない。)
$\rm (H_3Si)_3N$不対電子が非局在化している図
参考
シュライバー・アトキンス 無機化学(上)第6版 p468