酸化物と水酸化物の中には酸と塩基のいずれとも反応することができるものがあります。この塩基と酸の両機能を果たす酸化物や水酸化物をそれぞれ、両性酸化物、両性水酸化物といいます。一番最も知られる例は水です。水は両性酸化物で、酸とも塩基とも反応、逆に言えば、塩基と酸の両機能を持ちます。しかし、通常、この用語は通常金属の酸化物や水酸化物の両性挙動に対して用いられることが多いです。以下では例を上げて説明します。
両性酸化物の例
両性酸化物としては例えば$γ$型酸化アルミニウムが挙げられます。これは、
\begin{eqnarray}
\rm γ-Al_2O_3+3H_2O+6H_3O^{+}&→&\rm 2[Al(OH_2)_6]^{3+} \tag{1}\\
\rm γ-Al_2O_3+3H_2O+2OH^{-}&→&\rm 2[Al(OH)_4]^{-} \tag{2}\\
\end{eqnarray}
というように、酸や塩基と反応し、錯体を形成します。
$(1)$式のヘキサアクアイオンは例えば、$\rm H_2SO_4$と反応させた後、硫酸塩として単離することができます。
$(2)$式の$\rm 2[Al(OH)_4]^{-}$は$\rm NaOH$を水酸化物イオンの供給源にすることで$Na^{+}$塩として単離することができます。
両性水酸化物の例
両性水酸化物としては例えば水酸化アルミニウムが挙げられます。これも、
\begin{eqnarray}
\rm Al(OH)_3+KOH&→&\rm K[Al(OH)_4] \\
\rm Al(OH)_3+3HNO_2&→&\rm Al(NO_3)_3 +3H_2O\\
\end{eqnarray}
と確かに塩基と酸、両方と反応します。
参考)ハウスクロフト無機化学 上 第3版 p184