反磁性・常磁性・強磁性・反強磁性

磁性には、「反磁性」と「常磁性」、「強磁性」と「反強磁性」の4種類が存在します。この内、「反磁性」はすべての物質が持っている性質です。一方、「常磁性」は不対電子を持っている物質のみが持つ性質で、その「常磁性」物質どうしが接近し互いに影響を生じた場合に生まれるのが「強磁性」あるいは「反強磁性」です。以下にそれぞれ4つの特徴を書きます。

反磁性

反磁性とは磁場がかけられた時に、その磁場とは反対方向に小さな磁気モーメントが生じる性質のことです。この性質はすべての物質に見られます。原子の中には電子がありますが、外部磁場がかけられると電子はフレミングの左手の法則より、その磁場と垂直方向に等速円運動をします。そうすると、右ねじの法則より、電子の円運動をしている平面と垂直に外部磁場とは逆向きの磁場が発生します。これが、反磁性の原因です。

不対電子を持っていない物質では、磁場に対する応答はこれだけですので、磁化率は負ということになります。この磁化率は磁場の強さ及び温度によって変わることはありません。
不対電子を持ってる物質では、後述の常磁性がありますので、それを多少打ち消すという形で反磁性が現れます。反磁性の効果は常磁性の効果に比べてかなり小さく、典型的な場合では真の常時性の10%以下です。

常磁性

不対電子を持つ物質に磁場がかけられると、不対電子の向きが揃って、かけられた方向と同じ方向に磁気モーメントが生じます。これを常磁性といいます。仮に不対電子を有する各物質が十分に離れていて、互いに独立に挙動するようなとき、単純な常磁性が見られます。この単純な常磁性は後述のカップリング相互作用を考慮しない場合の常磁性を指します。この単純な常磁性はキュリーの法則に従い、こうして得られた磁気モーメントの強さは(軌道運動からくる正あるいは負の小さな寄与を無視しても許される場合)は、不対電子の数に比例すると解釈できます。

強磁性と強反磁性

強磁性や強反磁性は個々の常磁性原子あるいはイオンが互いに接近し、すべて強め合う配列になっているのが強磁性で、打ち消しあう配列になっているのが反強磁性です。

強磁性


強磁性とは上記のようにそれぞれ常磁性をもった分子(原子)がスピンを同じ方向に向けて配置されている状態です。

すべての分子の磁性が強め合うため、強磁性の場合は個々のモーメントが独立して作用するような場合と比べるとその物質の磁化率は極めて大きなものになります。

強反磁性


強反磁性は常磁性体がお互いの磁性を打ち消すように配置された状態の個体で起こる現象です。
個々のモーメントが独立して作用する場合に期待される値よりも小さな磁化率を持つことになります。

強磁性と反強磁性の原因

基本的には、強反磁性の方が安定なので、普通は強反磁性の構造をとります。
では、なぜ強磁性のような構造をとることもあるのでしょうか?
一つの説明としては、同じエネルギーの軌道がたくさん縮重しているため、フントの法則より、そこに一つの電子しか入れないということになります。これを交換相互作用といいます。

キュリー温度とネール温度

強磁性は交換相互作用によるものでしたが、温度が上がってしまうと、いつかその相互作用より熱エネルギーが勝り、スピンの向きがそろわなくなります。そのため、ある温度のしきい値を超えると一気に磁力が通常の常磁性物質程度にまで落ち込みます。その温度をキュリー温度といいます。

逆に、反強磁性の場合は、内部の磁力が交互に並ぶ方が安定というもので、”配置”によるものですが、こちらも同様に、熱エネルギーが大きくなると、この配置が崩れるため、反強磁性の性質も弱くなります。反強磁性の場合はある温度のしきい値を超えると、磁力が通常の常磁性物質程度まで回復します。この温度のことをネール温度といいます。

イメージ図

参考:コットンウィルキンソンガウス 基礎無機化学 p497 p498

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