混合原子価化合物

分子内に原子価状態(酸化数)が異なる中心元素を2つ以上もつ化合物を混合原子価化合物といいます。混合原子価化合物は中心元素間の相互作用の程度によって、クラスⅠ~Ⅲに分類されます。(Robin-Dayの分類)

クラスⅠ
各酸化状態が非常に異なった環境にある化合物で、2つの酸化状態には相互作用はほとんどありません。このため、原子価電子は局在化していて、各成分の混合物とみなせるような性質を示します。具体的には$\rm Sb_2O_4$や$\rm GaCl_2$がそれに当たります。

クラスⅡ
各酸化状態が異なった環境を持つが、サイトが良く似ている混合原子価化合物を指します。電子移動に要するエネルギーが低く、原子間の電子移動による吸収(原子価間電荷移動吸収帯)が可視から近赤外領域に現れるため、黒みを帯びた色をしています。通常クラスⅡの混合原子価化合物は半導体です。

クラスⅢ
原子価電子は非局在化しており、中心元素の原子価状態の区別がつかず、平均酸化数となります。クラスⅡと同じく、原子価間電荷移動吸収のため、黒みを帯びた色をしています。クラスⅢはさらに、電子が分子やクラスター内で非局在化しているクラスⅢAと固体全体で非局在化しているクラスⅢBにわかることができます。通常クラスⅢBの化合物は金属的伝導性を持ちます。

上記のⅠ~Ⅲの分類は、混合原子価状態を観測する測定手法のタイムスケールに固有なことに留意する必要があります。

引用)竹田満洲雄「無機・分析化学演習」p45

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