固体表面とは
固体内部のことをバルクといい、固体表面はそのまま固体表面といいます。
例えば、ダイヤモンドは切り方によって、下のように表面に結合手が1本露出するか、2本露出するかが変わってきます。このような、表面に露出し、結合の相手がイない結合のことをダングリングボンドといいます。
ダングリングは「ぶらぶら」の意味で、ぶらぶらとして結合という意味です。
強く共有結合していた結合なので、このぶらぶらした状態は不安定な状態です。よって、なにかと結合(化学反応)したり、構造変化を起こしたりします。
つまり、バルブはきれいな形でも、表面はバルブと同じような構造をしておらず、表面特有の性質(機能)があるということです。
固体表面の機能の種類
まず、一つ目は、その固体表面の性質自体を利用したものです。
そのようなことを利用している重要な例が触媒です。正確には、不均一触媒です。集積回路も固体表面の機能が用いられています。
二つ目は、物質内の特性を外界に引き出す際の通り道の役割です。
(金属・絶縁体)–(半導体)界面や、(金属・絶縁体)–(超伝導体)界面がその例です。
三つ目は物質合成の場としての固体表面としての役割です。
人工格子形成の下地として用います。結晶はうまく切ると、整然と原子が並びます。そのきれいに並んだ原子の層を利用して、その上にきれいな原子の薄膜を成長させます。具体例は、分子線エピタキシー法(MBE)や化学蒸着法(CVD)、laser ablationです。
どこまでが固体表面なのか?
なにを議論するかで、考えるべき固体表面の深さが変わってきます。
もっとも浅い表面は1原子層です。触媒などの表面や、エピタキシー法に関するを議論する場合は、第一層目の原子が重要になってきます。
一方、鏡が光を反射する場合など、光に関する議論の場合は、光は光の波長のオーダーで内部に入り込むので、固体表面はその光の第一層目から波長程度内部に入り込んだ部分を固体表面といいます。
また、更に大きいオーダーになると、錆や印刷などになってきます。
触媒の表面積について
触媒は微粒子になっていることが多いです。これは、単位体積あたりの表面積が大きくなるの、つまり反応物との接触面積が大きくなるので、粒が小さくなるほど良いということです。
しかし、粒が小さくなると、不安定になり、安定になろうと、凝集しようとします。また、熱によって粒径が大きくなることもあります(シンタリングといいます)。これを防ぐために、化学的に安定なより大きな粒の上に乗せるということをします。このことを担持といい、化学的に安定な大きな粒子のことを担体(英語ではサポートといいます)といいます。担体はシンタリングを防ぐ役割や、反応物をくっつけるという役割も持ちます。
共有結合の表面の例
バンド構造が現れたり、ダングリングボンドに見られるように、結合の向きに指向性があります。
また、表面に特異的な周期性が現れる場合もあります。
例えば、シリコンの(1.1.1)面と言われる7×7個のシリコンで形成される超構造もあります。
(1.0.0)面でも、理想表面に対して、2×1や2×2の周期性を獲得します。(2×1や、2×2とは、例えば、2×1の場合、縦に関しては2倍の周期になっていて、横に関しては1倍の周期性になっているということです。つまり、何倍の周期になっているかということです。)
また、固体表面における段差をステップ、平らな部分をテラスといいます。
このようにとても複雑です。
イオン結晶の表面の例
イオン結晶は共有結晶や金属結晶ほど研究されてイないようです。
イオン結晶を切ると、陽イオンと陰イオンが交互に出てきます。これをなるべくならす方向に表面が移動します。表面緩和し、ランプリング構造を取るという言うらしいです。
また、イオン性結晶だと、STMが使えない場合が多いです。なぜなら、電子が流れないからです。そのため、原子間力顕微鏡を用いる必要があります。
金属結晶の表面の例
例えば、金(1.1.1)面の表面構造でも、特有な並びがあります。小さい領域だと、きれいにならんでいますが、大きい領域だと、でこぼことした構造が現れます(これをヘリングボーン構造といいます)。
この構造は、22×$\sqrt 3$の周期性があり、このヘリングボーン構造の角に、分子が好んで吸着するようです。
つまり、このように、同じ表面によっても分子が表面に付きやすかったり、つきにくかったりするということです。
表面しかない物質
グラフェンは表面しかなく、バルクがない物質です。そして、このグラフェンは特異的な電気伝導度が現れます。このグラフェンはセロハンテープで剥がすという操作を繰り返して、得られ、2010年にノーベル賞を獲得しています。このグラフェンは抵抗が小さいです。