密度汎関数理論

密度汎関数理論全体はKornとHohenbergによって証明された2つの数学的定理と、1960年代なかばにKohnとHohenbergによって導入された一連の方程式に基礎をおいている。HohenbergとKohnによる一番目の定理は
$$””Schrödinger方程式から得られる基底状態エネルギーは、電子密度のユニークな汎関数である””$$
この定理は、基底状態の波動関数と電子密度との間には1対1の関係が存在することをいっている。また、汎関数とは名前から想像されるとおり、関数というもっと馴染みのある概念と密接に関係している。一つの関数は1つあるいは複数この変数を持ち、これらの変数から一つの値を定義する。汎関数も同様なものであるが、ただし、1つの関数に対して一つの値が定義される。例えば、
$$F[f]=\int^1_{-1}f(x)\d x$$
は関数$f(x)$の汎関数である。$f(x)=x^2+1$を評価すれば、$F[x]=\frac{8}{3}$となる。汎関数をつかぅってHohenbergとKohnの結論を言い換えると、基底状態のエネルギー$E$は$E[n(r)]$となっているということができる。これが汎関数関数理論と呼ばれる理由である。
HorhenbergとKohnの結果を更に別の言い方で表せば、基底状態の電子密度はエネルギーや、波動関数を含む基底状態のあらゆる性質を一意に決めるものである。これは、つまり、Schrödinger方程式を解く(より正確には基底状態のエネルギーを求めるということ)際には、3N次元もある波動関数ではなく、より次元の低い3次元の関数である電子密度に注目して解けばいいということを表す。

例えば、23000以上の次元をもつ$\rm Pd$原子100個のナノクラスター問題に対して、この定理を適用すると、たった3つの次元の問題に帰着される。

Hohenberg-Kohnの第一の定理はSchrödinger方程式を解くことができる電子密度の汎関数が存在するということを注意深く証明しながら述べているが、実際にその汎関数がどのようなものであるかについては言及していない。

第二のHohenberg-Kohnの定理は、汎関数の重要な性質を定めている。以下のような定理である。
$$””汎関数であるエネルギーを最低にする電子密度は、\\Schrödinger方程式の解に対応する真の電子密度である。””$$
もし真の汎関数の形がわかっているのであれば、対応するエネルギーが最低になるように電子密度を変化させれば良い。しかし、実際には真の汎関数の近似形を用いて、この変分原理を用いた計算を行うことになる。

参考文献)
佐々木退造 末原茂 「密度汎関数理論入門」 吉岡書店 2014  p.12~p13

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