共役塩基機構

配位子置換反応の中で、侵入基が直接錯体の金属中心に攻撃をする以外の反応経路を取る場合もあります。共役塩基機構はその一つです。

例えば、Co(Ⅲ)アンミン錯体の置換反応は$\rm [OH]^-$によって触媒され、以下のような反応です。
$$\rm [Co(NH_3)_5X]^{2+}+[OH]^-→[Co(NH_3)_5OH]^{2+}+X^-$$
そして、この反応速度は
$$反応速度=k_{\rm obs}{\rm [Co(NH_3)_5X^{2+}][OH^-]}\tag{☆}$$
となります。反応速度式に$\rm [OH^-]$が含まれるということは$\rm [OH^-]$が律速段階に関与していることを示しています。しかしながらこれは$[OH]^-$が中心金属を攻撃するからではなく、$\rm [OH^-]$が中心金属を攻撃するからではなく、$[OH]^-$が配位している$\rm NH_3$配位子から脱プロトン化するためである。この反応ステップは以下のような素反応により構成され、共役塩基機構と呼ばれます。
\begin{eqnarray}
\rm [Co(NH_3)X]^{2+}+[OH]^-&\overset{ K}{⇆ }&\rm [Co(NH_3)_4(NH_2)X]^++H_2O \\
\rm [Co(NH_3)_4(NH_2)X]^+&\xrightarrow[ ]{k_2 }&\rm [Co(NH_3)_4(NH_2)]^{2+}+X^- \\
\rm [Co(NH_3)_4(NH_2)]^{2+}+H_2O&\xrightarrow[ ]{速い }&\rm [Co(NH_3)_5(OH)]^{2+} \\
\end{eqnarray}
平衡反応の平衡定数を$K$とすると、この機構と合致する反応速度式は以下のようになります。
$$反応速度=\f{Kk_2{\rm [Co(NH_3)_5X^{2+}][OH^-]}}{1+K{\rm [OH^-]}}$$
${\rm K[OH]^-}<<1$であれば、上記の☆式と同じ様になります。

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