内圏機構

内圏機構は配位子置換反応の経路の一つで、架橋配位子が電子移動経路として働きます。最も始めに行われた内圏機構の実証は以下のような反応です。
$$\rm [Co(NH_3)_5Cl]^{2+}+[Cr(OH_2)_6]^{2+}+5[H_3O]^{+}→[Co(OH_2)_6]^{2+}+[Cr(OH_2)_5Cl]^{2+}+5[NH_4]^{+}$$
この$\rm [Co(NH_3)_5Cl]^{2+}$の$\rm Cl^-$を標識し、過剰量の標識していない$\rm Cl^-$の存在下でこの反応を行ったところ、すべての$\rm [Cr(OH_2)_5Cl]^{2+}$の$\rm Cl$はすべて$\rm [Co(NH_3)_5Cl]^{2+}$に由来していることが実験によりわかっています。つまりこれから、$\rm Cl^-$は反応中、両方の金属に架橋していると考えられます。
つまり、内圏機構はこの反応の例にあるように$\rm Cl^-$などの架橋配位子によって2つの金属が架橋された反応中間体が生成する反応機構です。
内圏機構の電子移動反応では、ハロゲン化物イオン$\rm Cl^-$以外にも$\rm [OH]^-,[CN]^-,[NCS]^-$やピラジン、4,-4’ビピリジンなどが架橋配位子となる場合が多いです。

内圏機構の反応は架橋構造形成、電子移動および架橋構造解離の3つの過程にわけることができますが、どの過程が律速になるかは、反応によって変わります。ただし、電子移動が律速段階になる傾向があります。

また、配位子によっては、結合異性の混合物が生成することがあります。たとえば、$\rm NCS$の場合、以下のような異なる架橋構造を作るため、ことなる結合異性体ができます。
以下の図において、上の結合異性体${\rm [Co(NH_3)_5(NCS}-S)]$は70%,下の結合異性体${\rm [Co(NH_3)_5(NCS}-N)]$は30%ほどできます。

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