酸化的付加反応

1つの配位子が付加するときに、同時に中心金属の酸化数も増加する場合、酸化的付加反応といいます。
一般に
$$\rm L_nM^n + XY ⇄ L_n(X)(Y)M^{n+2}$$

という式で書くことができます。
この酸化的付加反応が起こるための条件は3つあります。

(a)その金属には非結合性電子密度があること
(b)XとYに2つの新しい結合が生成できるようにするため、錯体 $\rm L_nM$ には2つの空いている配位座があること
(c)+2の酸化数でも安定な金属であること

この酸化的付加反応はMが金属ではない場合でさえよく起こります。たとえば以下のような反応です。
$$\rm (CH_3)_2S+I_2 ⇄ (CH_3)_2SI_2$$

Mが遷移金属の場合は$d^8$または$d^{10}$電子配置をとる場合に酸化的付加反応がよく見られます。$d^8$ 錯体の多くが分子状水素と反応するのは酸化的付加反応の例だといえます。
この酸化的付加ですが、分子状水素の結合エネルギーは$\rm H-H=約450kJmol^{-1}$ととても高いにもかかわらず、中心金属へ酸化的付加する理由は、以下のように説明することができます。

$\rm H_2$ 分子が触媒金属に接近すると、金属から $\rm H_2$ 分子の反結合性軌道に電子が入り込み、結合を弱める。結果として $\rm H_2$ 分子はホモリシス(1 電子ずつ分け合う開裂形式)によって原子状水素として金属に配位する。

参考: コットンウィルキンソンガウス 基礎無機化学 p679,p682

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