挿入反応

金属ー配位子結合の間に、他の原子や原子団が挿入される形で結合する反応を挿入反応といいます。

一般式で表すと次のような反応です。
$$\rm L_nMーX  + YX → L_nMー(XY)ーX$$

具体例としては以下のような反応があります。
$$\rm (CO)_5MnCH_3 + CO → (CO)_5MnCOCH_3$$ さらに、この反応には詳しい研究がなされており、次の3つのことがわかっています。
(a)アシル配位子になる(つまり挿入される)$\rm CO$分子はもともとその金属に配位していたものである

これは$\rm ^{14}CO$をトレーサーに用いた研究によって確認されています。
以上の図から、たしかにアシル配位子(挿入されたCO)は分子外のCO(ここでいうと$\rm ^{14}CO$です)ではなく、金属にもともと配位していたCO分子であることがわかります。

(b)入ってくるCOは上図のように、アシル基に対して$cis$に付加する。

これは上の図から見るとわかるように、外部から入ってきた$\rm CO$(この例では$\rm ^{14}CO$です。)はアシル基に対して$cis$で付加しています。

(c)配位子のアルキルからアシルへの転換は$\rm CO$以外の配位子の付加によっても推進される。

これは例えば、過剰の$\rm PPh_3$の存在下では以下のような反応を起こします。

また、この挿入反応の速度論的な研究によると、
一段階目が八面体のアルキル誘導体と5配位のアシル誘導体との間の平衡反応で、
$$\rm CH_3Mn(CO)_5 ⇄ CH_3COMn(CO)_4$$ 二段階目でこの5配位の中間体に外部の配位子$\rm L$($\rm CO , PPh_3 など$)が付加する
$$\rm CH_3COMn(CO)_4 + L → CH_3COMn(CO)_4L$$ ということがわかっています。

参考: コットンウィルキンソンガウス 基礎無機化学 p.683

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