水銀の融点は$-39℃$で金属の中では最も低いです。水銀の融点がこのように低い理由は、その電子構造にあります。水銀の電子構造は$\rm [Xe]4f^{14}5d^{10}6s^2$です。$\rm d$軌道と$\rm f$軌道、特に$\rm f$軌道は遮蔽効果が低く、かつ、水銀は$\rm 4f$軌道と$\rm 5d$軌道に最大個数の電子が収容されています。つまり、最外殻の$\rm 6s$軌道に存在する電子の有効核電荷が非常に大きくなります。そのため、最外殻である$\rm 6s$軌道の電子は核に強く引きつけられ、自由電子として機能しづらくなるため、$\rm Hg-Hg$金属間結合は特に弱くなります。そのため融点や沸点が低くなります。
これは不活性電子対効果の効果の一例といえます。