カノニカル分配関数

アンサンブル(ensenble)
これは集団という意味です。音楽で小さい集団演奏をアンサンブルともいいます。
ここでいうアンサンブルとは、抽象的な思考の意味でのあつまり、集合のことを表します。
これはどんなものの集まりかというと、一つの分子、または一つの系に許される(とりうる)すべての状態、あるいは、集合に許されるすべての状態のことを集めたものです。
熱力学ですと、アンサンブルは3種類ほど出てきます。
・ミクロ・カノニカル・アンサンブル(micro canonical ensenble)
・カノニカル・アンサンブル(canonical ensenble)
・グランド・カノニカル・アンサンブル(grand canonical ensenble)

カノニカルとは、「正統な、正準な」という意味です。
アンサンブルは、いま述べた通り、「集団、集合」という意味です。

この3つは比べてみると個々で理解するよりわかりやすいです。

ミクロ・カノニカル・アンサンブルとは
一定のエネルギー$E$をもつアンサンブルです。
分子数$N[個]$、体積$V$、全エネルギー$E$が共通しています。

カノニカルアンサンブルになると、もう少し自由度が大きくなってきます。
一つの集合が周囲のエネルギーを交換できるものです。
そのかわり粒子の行き来はできません。
分子数$N[個]$,体積$V$は一定ですが、全エネルギー$E$が共通しないかわりに、温度$T$が共通しています。

グランド・カノニカル・アンサンブルではもっと自由度が大きくなり、
エネルギーだけではなく、粒子の移動も自由になります。
体積$V$は一定ですが、
全エネルギー$E$が共通しないかわりに、温度$T$が共通し、
分子数$N$が共通するかわりに、化学ポテンシャル$μ$が共通しています。

化学ポテンシャルとは物質量を変化させたときに変化するギブズの自由エネルギーの大きさです。

以降このページでは使うのは、真ん中のカノニカル・アンサンブルの条件を用います。

カノニカル・アンサンブル
は相互作用する分子系への一般化に用います。

いかの図がカノニカルアンサンブルのイメージです。
この閉鎖系の数を$\tilde{N}$,
アンサンブル全体のエネルギーを$\tilde{E}$
エネルギー$E_i$を持つ要素の数を$\tilde{n_i}$
とします。
そうすると、

$$\b
\sum_i\tilde{n_i}E_i&=&\tilde{E} \\
\sum_i\tilde{n_i}&=&\tilde{N} \\
\e$$

ある瞬間でのアンサンブルの配置の数
を重みといいます。ここでは$\tilde{W}$と表します。

そうすると、
$$\b
\tilde{W}&=&\f{\tilde{N}!}{\tilde{n_0}\tilde{n_1}\tilde{n_2}\tilde{n_3}・・・} \\
\e$$ ここで、この重みが最大になる配置が最確配置といい、もっとも起こりうる配置です。この最確配置ではボルツマン分布が成り立ちます。

ボルツマン分布の関係は以下のようでした。
$$\b
\f{\tilde{n}_i}{\tilde{N}}&=&\f{e^{-βE_i}}{Q} \\
Q&=&\sum_ie^{-βE_i} \\
\e$$ これをカノニカル分子分配関数といいます。

式の形は単一の閉鎖系と同じですね。
参考)分子分配関数
$$\b
q&=&\sum_ie^{-βε_i} \\
\e$$

カノニカル分配関数と熱力学関数との関係を見ていきましょう。

まずは内部エネルギーです。
各要素のエネルギーは$E_i$と様々な値をとりますが、ここでは平均をとります。各要素のエネルギーの平均を$E=\f{\tilde{E}}{\tilde{N}}$と置きます。

そうすると、$\tilde{N}→∞$のとき、
$$\b
U-U(0)&=&E \\
&=&\f{\tilde{E}}{\tilde{N}}$\\
&=& \f{1}{\tilde{N}}\sum_i\tilde{n}_iE_i\\
&=& \sum_i\tilde{p}_iE_i\\
\e $$$\tilde{P}$は$\tilde{P}=-\f{e^{-βE_i}}{Q}$で、エネルギーが$E_i$の状態$i$にあるアンサンブルの要素の割合のことです。

よって、 
$$\b
U-U(0)&=&\sum_i\f{e^{-βE_i}}{Q} \\
&=& \f{1}{Q}\sum_iE_ie^{-βE_i}\\
E_ie^{-βE_i}&=&-\f{\p}{\p β}e^{-βE_i}より、 \\
U-U(0)&=&-\f{1}{Q}\f{\p}{\p β}\s{\sum_ie^{-βE_i}}_V \\
&=&-\f{1}{Q}\ddp{Q}{β}_V \\
U&=&U(0)-\f{1}{Q}\ddp{Q}{β}_V\\
&=&U(0)-\f{1}{Q}\ddp{\ln Q}{β}_V\\
&&下の二式は使いやすいほうを用います
\e$$

さて、次はエントロピーとカノニカルアンサンブルとの関係です。
各要素の平均の重みを$W$とすると、
$\tilde{W}=W^{\tilde{N}}$
の関係が成り立ちます。
$\tilde{W}$はある配置の重みです。
$W$アンサンブルの各要素の平均の重みです。

おなじみのボルツマンの式を用いると、
$$\b
S&=&k\ln{N} \\
&=&k\ln{\tilde{N}} \\
&=& \f{k}{\tilde{N}}\\
&=& \f{U-U(0)}{T}+k\ln Q\\
\e$$

となります。

次は、サッカーデトロードの式にはいるかというと、もう一段階あちます。
今考えているカノニカルアンサンブルは何こかの分子の集合のことですが、
独立な分子系の$Q$(ここでは希ガス、理想気体を想定しています)分子の存在の様子によって、このQが変わります。

分子が区別できる場合、
なぜ区別できるかは後述します。
分子が区別できる場合のカノニカル分配関数は
$$Q=q^N $$とあらわすことができます。
これは局在系といいます。
このモデルが当てはめられる例は低温での希ガスの結晶物質(理想結晶)
それぞれの粒子が固定されているため、場所で特定区別することができるからです。この場所のことを「サイト」といいます。局在系よりはマイナーな領域ではあります。

分子が区別できない場合は
$$Q=\f{q^N}{N!} $$となり、$N!$で割る必要が出てきます。N!は通常大きな数ですから、大きな違いです。
これは非局在系とよばれ、
このモデルが当てはめれる例は通常の希ガス(理想気体)です。

なぜ、$N!$で割らなければいけないかというのは、高校数学でやったCかPかの違いです。

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