水素分子$\rm H_2$には2つの形が存在し、これらでは2つの核スピンの相対的な向きが異なっています。オルト水素ではスピンは互いに平行($\rm I=1$:三重項)であり、パラ水素ではスピンは互いに反平行($\rm I=0$:一重項)になっています。
絶対零度($T=0$)では水素は100%がパラの状態で存在します。
しかし、温度が上昇すると、平衡状態で両者が共存した状態になり、温度上昇に伴ってオルト水素の割合が増加します。室温では$オルト水素:パラ水素=3:1$の比率になり、オルト水素の方が多いです。
オルト水素とパラ水素はほとんど同じ物理的性質を持っていますが、パラ水素の融点と沸点は通常の水素より約0.1℃低く、パラ水素はオルト水素より約50%大きい熱伝導率を持っており、熱容量もまた大きく異なります。
また、オルト水素からパラ水素への変換はとても遅いです。そのため、変換には触媒が必要です。
実際にパラ水素が用いられる例としてはパラ水素低温マトリックス単離があります。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/60/7/60_17-RV-003/_pdf/)
参考)
シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p355