※酢酸銅のような二量体はスピン結合を仲介する配位子によって2つの金属原子が架橋されている例の一つです。多くの金属酵素はこのように複数の金属中心をもっており、磁気的なスピン結合を示します。また、この酢酸銅では銅の間で反強磁性的なスピン結合が見られます。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 下 第6版 p640
白金ーエチレン間の結合は、エテンの充満π分子軌道から金属の空σ軌道への電子密度への供与(下図左)と金属の充満$dπ$軌道からエテンの空$\pi*$軌道への電子密度の逆供与(下図右)から成り立っている。
※青と赤で位相を表しています。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 下 第6版 p694
金属d軌道から配位子の低エネルギーの電子受容軌道への電荷移動遷移であるMLCT遷移に基づく。
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MLCT遷移について
金属から配位子への電荷移動遷移は配位子が低いエネルギーの$\pi*$軌道をもつ場合、特に芳香族配位子を持つ錯体で観測されることが多い。金属イオンが低酸化状態にある場合には、金属d軌道は比較的配位子の空軌道に近づくため、遷移エネルギーは低く、可視領域に吸収が見える。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 下 第6版 p636
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CT遷移(電荷移動遷移)について
CT遷移は配位子の性格が支配的な軌道と金属の性格が支配的な軌道との間の電子の移動によって生じる遷移のことである。この電子移動のうち、配位子から金属に電子が移動する遷移を配位子ー金属電荷移動遷移(LMCT遷移)、逆に金属から配位子に移る遷移を金属配位子電荷移動遷移(MLCT遷移)と区別する。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 下 第6版 p634