球を最密で空間に配置するとき、一層目と二層目はただ一つに決まる。しかし、三層目は一層目の真上に来るように配置するかしないかで場合分けが生じる。この真上に来る配置にすると六方最密格子、ずらした配置になると面心立方格子になる。
八面体間隙は6個の原子に囲まれている。
四面体間隙は4個の原子に囲まれている。
また、図1(左)の単位格子には、4個の八面体間隙と8個の四面体間隙が存在する。
※八面体間隙と四面体間隙について
原子一層を最密で敷き詰め、その上に最密で原子をもう一層敷き詰めることで、球同士で囲まれた隙間(間隙(かんげき)といいます)が生じます。この間隙には2種類あり、以下のように、八面体間隙と四面体間隙があります。八面体間隙は
画像引用)http://www.sc.u-tokai.ac.jp/katsumatalab/kougi/ceram4.pdf
※最密充填構造の間隙について
$N$個の原子から成る、最密充填構造の結晶には、$N$個の八面体間隙と$2N$個の四面体間隙があります。それぞれ、八面体間隙には$0.414r$までの大きさの剛体球を入れることができ、四面体間隙には$0.225r$までの大きさの剛体球を入れることができます。しかし、hcp(六方最密充填)においては、隣接する四面体間隙は同じ四面体の面を共有しており、非常に接近しているため、両者が同時に占有されることはありません。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p81
$r$を陰イオン半径とすると、八面体間隙には約$0.4r$までの大きさの、四面体間隙には約$0.2r$までの大きさの剛体球を入れることができる。よって、$\rm Al^{3+}$のイオン半径は、$\rm O^{2-}$のイオン半径の$\f{0.053}{0.14}=0.378$なので、四面体間隙には、間隙が小さすぎて入れない。そのため、$\rm Al^{3+}$は八面体間隙を占める。
※コランダム構造について
α-酸化アルミニウム(鉱物名は鋼玉=コランダム)の構造は$\rm O^{2-}$イオンの六方最密充填配列で、八面体間隙の$\f23$をカチオンが占めている。酸化状態が+3のチタン、バナジウム、クロム、ロジウム、鉄、およびガリウムの各酸化物はコランダム構造をとる。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p783
$\rm Al_2O_3$の中の$\rm Al^{3+}$を一部$\rm Cr^{3+}$に置換すると、$\rm Cr^{3+}$の方がイオン半径が大きいため、$\rm Cr^{3+}$周りの$\rm O^{2-}$だけ圧縮される。この圧縮により、$\rm Cr^{3+}$の配位子場遷移による吸収が高波数側へシフトするため、緑色から赤色になる。
※コランダム構造について2
$\rm Al_2O_3$ホスト格子中における$\rm Cr^{3+}$の周りでは、$\rm O^{2-}$イオンが圧縮される結果、$\rm Cr^{3+}$の配位子場遷移がシフトする。すなわち、この圧縮によって配位子場強度が増加するため、吸収が青い方に移動し、固体は白色光中で赤く見える。$\rm Cr^{3+}$イオンの吸収(および蛍光)スペクトルが圧縮によって変化することは、高圧実験の際に圧力を測るのに利用されることがある。この応用では、試料のち部にルビーの小さな結晶をつけておき、それを可視光で励起したときに観測される蛍光スペクトルのシフトから試料溶液内部の圧力がわかる。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p783