アルデヒドまたはケトンからアルカンをつくる一連の反応をWolff-Kishner反応といいいます。
アルデヒドまたはケトンは第一級アミンと反応してイミンにすることができました。
Wolff-Kishner反応では第一級アミンの代わりにヒドラジンを用います。そして、イミンのような構造をもつヒドラゾンを経て、それを塩基で還元することでアルカン生成物を得るという流れになります。なので、Wolff-Kishner還元ともいいます。(また、実際は濃いアルカリと加熱が必要なようです。)
また、この反応機構を文字で説明すると以下のようになります。
それと同じような反応により、アミンと同じく、アミノ基を持つ、ヒドラジンはアルデヒドまたはケトンに求核付加することができます。付加した結果できるのはイミンと類似した構造のヒドラゾンです。その後、塩基により弱酸性のN-Hプロトンが引き抜かれてヒドラゾンアニオンが生成し、それは炭素上負電荷、そしてN=Nの二重結合を持つアリル型の共鳴構造を持っています。つまり、炭素上に電子が豊富に存在するため、水に求核攻撃し、Hが付加、続いて塩基(OHー)により、残る酸性NーHが引き抜かれ、窒素の脱離とカルボアニオンの生成が起こります。この段階はN2が熱力学的に非常に安定なので、非可逆になります。そして最後に、プロトン化されて、塩基が再生し、中性のアルカン生成物ができます。
Wolff-Kishner還元と同じ出発物質で、同じ生成物質を与える反応に、アシルベンゼンの接触水素化によるアルキルベンゼンへの変換があります。
しかし、Wolff-Kishner還元のほうが良い結果が得られるため、通常はこのWolff-Kshner還元が用いられます。
参考:マクマリー有機化学 中 第8版 p708 p709