弱酸の水素イオン濃度

$$\newcommand\h{{\rm [{H^+}]}}
\newcommand\a{\rm [A^-]}
\newcommand\ha{\rm [HA]}
\newcommand\ka{K_{\rm a}}
\newcommand\kw{K_{\rm w}}
\newcommand\c{c_{\rm HA}}
\newcommand\oh{\rm [OH^-]}$$
弱酸の水溶液中では、酸自体の解離平衡以外にも、水の解離平衡も考えなくてはならない。$$\rm HA⇋ \rm H^+ + \rm A^- $$
$$\rm H_2O⇋H^+ + OH^-$$ これらより、
$$\ka=\f{\h \a}{\ha}\tag{1}$$(2)式より、$$\kw=\h\rm [OH^-]\tag{2}$$が成り立つ。
このとき、電荷均衡を考えると、$$\h=\a + \oh\tag{3}$$質量均衡を考えると、$$\c=\ha+\a\tag{4}$$ここまで見てくると、弱酸の水溶液では、式$(1)~(4)$が成立し、濃度未知数は$\ha,\h,\a,\oh$の4個であるから、連立方程式を解くことによって求められることがわかる。
$(3)$式より、$$\a=\h-\oh\tag{3′}$$これを$(4)$式に代入すると、$$\ha=\c-\a=\c-(\h-\oh)\tag{4′}$$ここで、$(1)$式に$(3′)(4′)$を代入すると、
$$\ka=\f{\h(\h-\oh)}{c-(\h-\oh)}\tag{1’}$$さらに、この式に$(2)$式を代入すると、
$$\ka=\f{\h(\h-\f{\kw}{\h})}{\c-(\h-\f{\kw}{\h})}$$となる。この式を変形すると、
$$\h^3+\ka\h^2-(\kw+\c\ka)\h-\ka\kw=0$$が得られる。
弱酸の水溶液の水素イオン濃度は、三次式で表される。コンピュータを使えば必ず解けるのだが、手計算で計算するにはめんどくさい。
近似を考えます。
とにかく弱酸といえども、水酸化物イオン濃度は水素イオン濃度より小さい。
このとき、ある程度弱酸の濃度が大きいと仮定し、水酸化物イオン濃度が水素イオン濃度の5%以下になる時、つまり、$\h×0.05>\oh$が成立するときを考える。
このとき、式$(3)$の変形である$\a=\h-\oh$において、$(\h-\oh)$における$\oh$は$\h$に対して無視できる。すると、$(1’)$式は
$$\ka=\f{\h^2}{\c-\h}\tag{1’’}$$となり、$\h$に対して二次式をとる。

上式の分母は、濃度$\c$の弱酸が解離した後に残った未解離の$\rm HA$の濃度である。そこで、弱酸の酸解離定数が小さく、ほとんど解離しない条件つまり全体の5%未満しか解離しないような条件$\c×0.05>\h$を仮定すると、$(1″)$式はさらに簡略化でき、
$$\ka=\f{\h^2}{\c}$$とかける。これを整理すると、
$$\h=\sqrt{\ka\c}\tag{1’’’}$$ となる。
解離定数が小さく、濃度が十分に高ければ、簡単に$(1’’’)$式から水素イオン濃度が計算可能である。仮に、弱酸の酸解離定数がある程度高かったとしても,$(1’’)$式を解けばいいだけの話である。高々2次式である。ただ、かなり希薄な溶液の場合は、水酸化物イオン濃度が水素イオン濃度の5%未満ということも、解離定数が小さいことも期待できないので、残念ながら3次式を解く(電卓をつかう)ことになる。

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