グラファイトは層間はファンデルワールス結合という弱い結合であるため、アルカリ金属などをその層間に挿入することができる。このような化合物を層間化合物という。例えばカリウム層間化合物の場合、価電子はグラファイトに供与され、$\rm K^+$の状態で入り込むため、高い伝導度を持つ。
グラファイトは層間に入りこんだ原子やイオンに対して電子供与体としても、また電子受容体としても働いて、層間化合物を作ることができる。例えば、K原子はその価電子を$\pi^*$バンドの空軌道に供与して、グラファイトを還元し、その結果生じた$\rm K^+$イオンは層の間に入り込む。$π^*$バンドに与えられた電子は移動するので、クラファイトのアルカリ金属の層間化合物は高い電気伝導率を持つ。この化合物の化学量論的な組成はカリウムの量と反応条件によって決まる。例えば、最もカリウムの比率が高い$\rm KC_8$はAAA積層構造になっている。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p454
原子価殻の電子が8個より多い原子を一つ以上含む化合物のことを超原子価化合物という。これは、空のd軌道を用いるために可能であるという説明ができる。オクテット則以上の電子を収容できるのはその原子が低エネルギーの空のd軌道をもっており、そのd軌道が使えるためである。
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LiからNeまでの第二周期元素はオクテット則によく従うが、第三周期以降の元素はこれから外れることがある。例えば、$\rm PCl_5$の結合では、P原子は原子価殻に10個の電子を持たなくてはならない。この種の化合物、つまり、原子価殻の電子が8個以上になる原子を少なくとも一個以上含む化合物を超原子価化合物という。
超原子価の説明の一つに余分の電子を収容できる空席のある低エネルギーのd軌道が使えるというものがある。この説明に従えば、P原子は空の3d軌道を使えば8個より多く電子を収容できる。$\rm PCl_5$を例にとれば、5対の結合電子対を持っているので、原子価殻の3sと3pから鳴る4つの軌道に加えて、少なくとも1個の3d軌道を用いなくてはならない。
このような考察から、第二周期元素の超原子価化合物がめったに存在しないのは、2d軌道が無いからだと考えられる。しかし、これは、ただ単に、小さな中心原子の周りには4個以上の電子対を詰め込むのは難しいからだといわれており、d軌道の有無は実際のところはほとんど関係ないようである。
参考)シュライバー・アトキンス 無機化学 上 第6版 p47
フントの法則は電子の運動状態に関する規則である。以下の3つにより構成されており、第一法則>第二法則>第三法則の順番で優先される。
第1法則:2個の電子のスピン角運動量は同じ向きが安定
第2法則:1個の電子のスピン角運動量と軌道角運動量は逆向きが安定
第3法則:2個の電子の軌道角運動量は同じ向きが安定
参考ページ)フントの法則
※電子項を用いた説明の方が厳密ですが、100字に収まらない気がしましたので、こちらの説明にしています。
結晶の格子中における結晶面や方向を記述するための指数である。面指数と方向指数の2種類がある。面指数は結晶や格子をどのような平面で切るかを指定し、方向指数は結晶、格子内での方向を指定する。
物質に短い波長のX線を照射すると、その物質中に含まれる元素に固有な波長のX線が発生する。このX線のことを蛍光X線といい、これを用いる分析法を蛍光X線分析という。蛍光X線の波長から定性分析が、強度から定量分析ができる。
※蛍光X線分析について
Moseleyが実験的には発見した、特性X線の波長$λ$と原子番号$Z$との関係を表す次式をMoseleyの法則という。
$$\f{1}{\sqrt{λ}}=K(Z-s)$$
$Kやs$は特性X線の各系列に固有の定数であり、例えば、$K_{α}$系列では$K=2868{\rm m^{-1/2}},s=1$となる。物質に短い波長のX線を照射すると、その物質中に含まれる元素に固有な波長のX線が発生する。このX線のことを蛍光X線といい、これを用いる分析法を蛍光X線分析という。Moseleyの法則を用いて蛍光X線の波長から定性分析が、強度から定量分析ができる。励起X線の波長は含まれている元素よりも短い(エネルギーが高い)必要があり、タングステンなどの重金属から発生したX線が用いられるほか、最近ではシンクロトロン放射光も用いられている
参考)竹田満洲雄「無機・分析化学演習」p355
アルミニウムの金属半径と酸化物イオンのイオン半径が近く、かつアルミニウムイオンが小さく、酸化膜のパッキングにほとんど影響しないことから、酸化膜は緻密になる。しかし、鉄は酸素ではなく、主に水と反応し、含水の水酸化物を発生し、それらの疎な凝集膜が赤さびであるため、剥がれやすい。
※アルミニウムの酸化膜について
アルミニウムは大きな符の標準還元電位をもつ金属なので、反応性は非常に高いと予想される。実際そのとおりであるが、アルミニウムは空気中で常用金属として用いることができる。それは金属アルミニウムの表面を空気に晒すとただちに$\rm Al_2O_3$を生成する。この$\rm 1~100nm$の薄膜層により下地のアルミニウム原子層を保護する。この現象は酸化物イオンのイオン半径(124pm)とアルミニウム金属半径(143pm)が近いため起こりうる。小さいアルミニウムイオン(68pm)は酸化物表面構造の隙間に収まるため、表面原子のパッキングにはほとんど影響しない。
※赤錆について
「赤錆」と呼ばれる鉄錆は、水の存在下での鉄の自然酸化によって生じる、オキシ水酸化鉄(III) 等の(含水)酸化物粒子の疎な凝集膜であるとみなせます。このような天然に生じた酸化膜には防食作用はありませんが、鉄であっても人工的に作られた緻密な酸化膜であれば、それは防食作用が認められます。